酒乱とアルコール中毒は違います

お酒の飲み方を考える際、一つしっかり把握しておかなければならないのが、「アルコール中毒」と「酒乱」は違うという事です。

酔っ払いはアル中ではありません

時より、酒癖の悪い人を“あいつはアル中だ!”とかと言う人がいますが、これはとんでもない誤解。酒を飲むと煩くなったり暴れるというのは『酒乱』であって、アルコール中毒ではありません。そもそもアル中の人が身の回りにいる人など、そう多くはないのです。

確かに、お酒を飲む事で心身が落ち着くため、飲酒せずにはいられないという人は大勢いて、その昔、彼らを「慢性アルコール中毒」、通称“アル中”と呼んでいました。しかし、今では『アルコール依存症』という精神疾患だとされています。しかも、アルコール依存症になると、お酒が心身にもたらす薬理作用によって自らをコントロール出来るため、飲酒するとおとなしくなるのが一般的でしょう。

それに対し、酒乱は所謂酔っ払いで、飲酒によっておとなしくなるなんてとんでもない。むしろ、お酒を飲まなければおとなしい人が、お酒を飲むと言動が一気に派手になり、時に自らをコントロール出来なくなったりする訳です。全く正反対である事は一目瞭然です。そこで、手が付けられなくなった暁には、119番ではなく、110番するのが賢明なのです。

正の強化効果を求める飲酒と負の強化効果を求める飲酒

そもそもアルコール依存症と酒乱とでは、お酒を飲む目的が異なります。酒乱の人は正の強化効果を求めて飲酒しますが、アルコール依存症の人は負の強化効果を求めて飲酒するのです。

「正の強化効果」とは、積極的に行動を起こすようにモチベーションを高めるもので、普段無口の人でもお酒を飲むと饒舌になるのは、その典型的例だと言えるでしょう。また、楽しむために飲むお酒も正の強化効果を求めていると言えます。

一方、「負の強化効果」とは、行動を起こさないようにテンションを下げ、抑圧するもので、アルコール依存症の人たちが言う心身を落ち着かせるための飲酒は、その代表格なのです。ただし、負が強化される事が必ずしも悪いという訳ではありません。少なくとも、冷静になれる事は自他ともにプラスで、問題は、その手段を飲酒に求める事にあるのです。

さらに、例えアルコール依存症でなくても、上司に怒られた時や仕事で失敗して落ち込んでいる時など、負の強化効果を求める飲み方が必要な時もあります。例えば、上司をぶん殴ってやりたいとか、自分はこの会社に必要ないのではないかという思いを持った時、やけ酒を飲んですっきりし、翌日からまた何事もなかったかのように頑張れれば、負の強化効果が功を奏した事になる訳です。ところが、酔っ払って怒りマックスになり、そこで暴言を吐いたり暴れたりすると、正の強化効果が悪い形で働いた事になり、時に大事に至る事も有り得ます。

このように、アルコールの力がもたらす正の強化効果と負の強化効果は常に紙一重で、必ずしも正がいいとか、負が悪いというものではありません。ケース・バイ・ケースで上手に作用させる事が肝心です。ところが、アルコール依存症の人や酒乱の人になると、それが出来ず、方やいつも負の強化効果が、方やいつも正の強化効果が作用してしまいます。そして、基本的に酒乱は正の強化効果の作用となり、基本的に負の強化効果の出るアルコール依存症に比べ、かなり危険だという事になるでしょう。

実際、酒乱は医師の治療を必要とする疾患ではありませんが、『アルコール乱用』という立派な「精神医学的診断名」を持っています。そして、“家庭や社会生活上、著明な障害や苦痛を引き起こす飲酒の仕方で、かつアルコール依存症ではないもの。”という定義が定められているのです。さらに、しばしば酒乱になって問題を引き起こす人たちを「酒害者(しゅがいしゃ)」と称し、彼らの飲酒に起因する被害を「酒害」と呼びます。

アル中は今もなくならない

という事で、「アルコール依存症」という精神疾患が確立された今、慢性アルコール中毒と呼ばれる人はいなくなりました。しかし、まだまだアル中で救急搬送される人は後を絶ちません。何故なら、『急性アルコール中毒』という疾患は未だ健在だからです。

『急性アルコール中毒』とは、血液中のアルコール濃度が急激に高まった状態で、症状としては、極めて軽ければ単に気分が悪いレベルですが、悪化すると昏睡状態になり、死に至る事も珍しくない恐ろしい病気です。しかも、不慮の交通事故のように、何気なく楽しくお酒を飲んでいるうちに自然と発症する事が多く、どんなに酒豪の人でも決して低くない確率でそのリスクを抱えていると言われています。

そんな急性アルコール中毒による救急搬送者の数は年々増える一方! 今や都心部では年間1万5,000人に達しようかという勢いで、全国となると、5万人以上の人が夜な夜な病因に担ぎ込まれているものと見られます。そして、最もその数が多いのが12月、次いで4月という事で、この5ヶ月間に年間の半数以上の人が発症しているのです。

年代的にはやはり20代の若者がダントツですが、中高年も油断は出来ません。極端に少ない年代というのはなく、加齢とともにリスクが高まって行くのが現実です。さらに、驚くべき事に、それで懲りるどころか、最終的にはアルコール依存症にまで達する人もいると言うから困ったものです。

そこで今回は、急性アルコール中毒からアルコール乱暴、そしてアルコール依存症を回避出来るお酒の飲み方を考えて行きたいと思います。それは自らの体に優しく、人にも優しいお酒の飲み方!!
誰もがマスターすべき飲酒術と言えるでしょう。

Posted by kenko-st