『酔い』って何だろう?酒酔いと乗り物酔いは違います!

人に優しく自分に優しいお酒の飲み方、それは間違いなく「酔わない飲み方」でしょう。ではでは、「酔う」とは一体全体どのような事なのでしょうか?

そもそも「酔う」って何だろう?

酔わないお酒の飲み方を考えるためには、まず、『酔い』について知らなければ話になりません。そこで、街角で、“あなたは酔った事がありますか?”と尋ねてみると、なんと、子供からお年寄りまで、実に多くの人が“はい!”と答えるではありませんか!! それもそのはず、「酔う」と一口に言っても、酒に酔う、車に酔う、船に酔う、あるいは、人に酔う、空気に酔う、さらに、名画に酔う、歓喜に酔うなど、私たち人間は驚くほどいろいろなものに酔うのです。

というのも、『酔う』というのは本来、何かの外的に体内を支配され、正常な判断や行動が出来なくなる状態を示します。つまり、その外敵が何なのか? そして、心身のどこを支配されるのか? によって症状は大きく変わって来るもので、必ずしも不快な現象ばかりとも限っていません。例えば、美しい絵を見て心が奪われるような場合、名画に酔うなどと言いますが、これを苦痛に感じる人はいないでしょう。さらに、歓喜に酔うというのは、まさに喜びに満ちあふれた状態です。

このように、目の前の物や風景、あるいは周辺の雰囲気に心を奪われ、批判する事を完全に忘れてしまう状態も『酔う』と表現します。何故なら、善悪や善し悪しを判断するために最低限必要な批判力や自制心、時に自覚を喪失している状態だからです。筆者などは職業柄、是非とも自分の文章に酔いしれたいと思うものです。

事実、「酔」という字は「麻酔(ますい」の「酔(すい)」で、知覚を失わせる事を意味します。つまり、感覚器官が麻痺している状態です。確かに、たとえ快感を感じるような酔いでも、問題点や疑うべき点を見つけ出す事が出来ない心理状態に陥る事が多く、かなり危険かも知れません。やはり酔いは怖いと思っておく方が無難でしょう。

「酔い」は怖い!!

『酔い』と一口に言ってもいろいろあって、私たち人間は様々なものに酔わされます。ただ、楽しい事より辛い事の方が印象に残りやすいのが人間の宿命。そのため、“あなたは酔った事がありますか?”と聞かれて、“はい!”と答えると同時に、「酒酔い」「乗り物酔い」の記憶を思い出す人が圧倒的多数のようです。因みに、小学生の30%は乗り物酔いをすると言われていますから、こうした質問に、沢山の子供たちが“はい!”と答えても不思議ではないでしょう。

一方、大人になると、やはり酒酔いが脳裏を過ぎる人が大半で、中には、酔っ払った時の恥ずかしい失態を熱く語る人も少なくありません。いずれにせよ、咄嗟に思い出される酔いというのは皆さん、中々心地よい記憶ではないようです。

確かに乗り物酔いというのは、常に不快感を伴います。初期段階では何だか頭が重い、痛いと言ったレベルですが、徐々に生唾や生あくびが出始め、気が付けば顔面蒼白、強い吐き気に見舞われ、ついに嘔吐に至る訳です。また、酒酔いも、類似の症状が出る事は多く、おまけに、長時間ダメージが続く事もしばしば。まさしく酔いは心身に堪えます。ただし、乗り物酔いと酒酔いは、全く異なる外的によって引き起こされる全く異なるメカニズムを持つ酔いです。

「乗り物酔い」のメカニズム

実は、「乗り物酔い」は「動揺病(どうようびょう)」と呼ばれ、うつ病などと同じ立派な「自律神経失調症」です。「車酔い」や「船酔い」など、発症する乗り物によって区分される事もありますが、そもそもの原因は全て「揺れ」! そう、車や船が悪いのではなく、犯人は「揺れ」なのです。その証拠に、止まっている車や船に長時間乗っていても、酔う人は殆どいません。それが動き出したとたんに酔う人が現れます。何故なら、肉体が感知する情報と脳が察知する情報にずれが生じるからです。

例えば、豪華客船でのんびりと旅をしているとしましょう。大海原の真ん中では見渡す限り青い海と空、目は、その風景をゆっくりと捉えます。まさにリラックスムード満載です。ところが、船が浮かぶ水面は常に不安定な状態にあり、揺れを伴います。そこで、耳の一番奥の「内耳(ないじ)」と呼ばれる場所にある「三半規管(さんはんきかん)」は、その揺れを感知し、“いやいや、リラックスしてる場合じゃないよ!!”という目とは全く異なる情報を脳に送るのです。

何とも余計なお世話のようですが、この三半規管が前後左右上下に身体がずれる可能性がある事を即座に察知してくれるからこそ、私たち人間は常に平衡感覚を保ち、数多くの転倒の危機を防ぐ事が出来ています。つまり、人がバランスを保つためにはなくてはならない機能なのですが、ただ、じっと船や車の中で座っているだけなら、そこまで必死になる必要はありません。脳としては、目が捉えた情報を元に、のんびり構えればいいと言ったところでしょう。しかし、三半規管は僅かな揺れにも反応し、次から次へと脳に情報を送り続けます。すると、脳内はパニック状態に陥り、自律神経が乱れ、様々な不具合を起こすという訳です。

因みに、この自律神経の乱れは、強い緊張感や圧迫感を感じた時にも発症します。ただし、これは三半規管の仕業ではありません。今現在の空間環境や姿勢に強いストレスを感じた時、全身の血管が急激に緩み、脳の血液が不足するために起きるもの「血管迷走神経反射(けっかんめいそうしんけいはんしゃ)」という症状で、突然気分が悪くなり、めまいや立ちくらみを感じるのが大きな特徴です。そのまま失神する事もしばしばで、これを「血管迷走神経性失神(けっかんめいそうしんけいせいせいしっしん)」と呼んでいます。所謂“人に酔う!”、あるいは“空気に酔う!”というのがこれで、元々人混みや閉鎖空間が生理的に苦手な場合、その環境に適応出来なくなって発症するものです。

Posted by kenko-st