お酒に強い人と弱い人の違いは? 酒酔いのメカニズム

元々アルコールは脳を麻痺させる作用を持つ物質です。しかも、体内で酸化し、アセトアルデヒドという有毒物質に変化します。そう、酒酔いが乗り物酔いや血管迷走神経反射よりはるかにたちが悪いのは、ダブルパンチで攻めて来るからなのです。

酒酔いはアルコール酔いとアセトアルデヒド中毒のダブルパンチ

お酒を飲むと、判断力や抑止力、集中力や注意力などが作動しなくなり、様々な失態を招く事にもなりかねません。さらに、顔が赤くなったり、頭痛や吐き気を催したりといった体調不良にも見舞われます。そして、最後には嘔吐という事になる訳ですが、実はこれらは一貫しているように見え、全く別々の「酔い」! 前者こそが「アルコール」による酔いで、後者は「アセトアルデヒド」による中毒症状です。

実際、酒乱の気のある人は大量のお酒を飲んでも、顔が赤くなる程度。頭が痛いとか、吐き気を催すという状態にまでは中々発展しません。だからこそ、どんどん飲み続けられるのです。確かに、ろれつが回らなくなったり、千鳥足になったりはしますが、これらは運動神経が麻痺させられているためで、典型的アルコール酔いです。

一方、顔が赤くなったかと思うと、たちまち体温上昇。頭ズキズキ、心臓ドキドキで、吐き気を催し、所謂“気持ち悪い!!”という状態に陥る人も大勢います。これは、体内でアルコールが酸化し、精製されたアセトアルデヒドの毒素にやられた状態で、立派な中毒症状です。そして、このアセトアルデヒド中毒が急速に悪化すると、『急性アルコール中毒』になる訳です。また、アセトアルデヒドの処理に手間取ると「二日酔い」になります。

という事で、一般的に見て、前者はお酒に強い人、後者はお酒に弱い人と言っていいでしょう。ただし、前者は酒癖の悪い人になりかねないので要注意です。しかも、飲酒量が増えれば、それだけ体内のアセトアルデヒドの生成量は増え、中毒症状を発症するリスクは高まります。加えて、その処理にも時間が掛かり、思考能力は正常に戻っても、頭痛や倦怠感が抜けないという二日酔い状態になる訳です。

こうした事から分かるように、酒酔いには、アルコール酔いとアセトアルデヒド中毒の2つの症状があり、お酒の強い人はアルコール酔いが主流、お酒の弱い人はアセトアルデヒド中毒が主流という事になります。けれど、お酒に強い人でもアセトアルデヒド中毒の危険性は常にあり、実際、飲量が増えやすい分、お酒に弱い人以上にアルコール酔いとのダブルパンチ攻撃を受けやすいと見ていいでしょう。そして、二日酔いにもなりやすいものと推測されます。

アルコール代謝のメカニズム

それでは、ここで美味しく飲酒したアルコールが代謝される仕組みを見てみましょう。と言っても、元々アルコールは必須栄養素ではありません。無理に体内に残し、身や骨にする必要のない物質なので、ただひたすら廃棄処理するのみです。そして、その処理は全て、肝臓の重要任務である解毒処理機能に任されています。

という事で、お酒を飲むと、取り敢えず胃の中に送り込まれる訳ですが、アルコールは水にも油にも溶けやすい物質です。そんなアルコールが、そのままじっと待っているはずがなく、胃の中で約2割が吸収され、残る8割は全て小腸で吸収されて血中に取り込まれます。その所要時間は僅か30分! そして、門脈(もんみゃく)と呼ばれる肝臓直行の静脈から肝臓に送り込まれると、肝臓は最優先でアルコール処理作業に勤しみます。ひとまず、肝細胞にある“ADH”こと「アルコール脱水素酵素」“MEOS”こと「ミクロソームエタノール酸化系」という酵素によって酸化させ、アセトアルデヒドに変化させるところまで持ち込むのです。

そうして、最終的には“ALDH”こと「アルデヒド脱水素酵素」という代謝酵素を使って、これを酢酸に分解すれば一安心。何しろ酢酸はお酢の主成分ですから、人体に悪影響を与える心配はなくなります。後は血中で水と炭酸ガスに分解され、汗や尿となって排出されるという仕組みです。

ところが、このアセトアルデヒドから酢酸を生成する作業が思いのほか大変で、1時間にほんの僅かしか熟せません。そこで、一度に処理出来る量だけ残し、後は肝静脈に送り込みます。そうする事により、全身を巡って再び手透きになる頃、次に処理するアセトアルデヒドが肝臓に戻って来るシステムになっているのです。

お酒の強い人と弱い人の違い

上記のように、飲酒によって取り込まれたアルコールは、全て肝臓で処理されます。ただし、私たち人間の肝臓が1時間に処理出来るアルコール量は、体重50kgの人なら約5g、体重60kgの人で約6g程度!! それに対し、アルコール度5%の缶ビール1本、350ml飲めば、摂取するアルコールは14gというのですから大変です。たとえ体重100kgのお相撲さんでも処理するのに1時間以上掛かる事になり、何杯も何時間も飲めばおかしくなっても不思議ではないでしょう。

しかも、飲酒後僅か30分でアルコール入り血液は完成し、全身を巡ります。当然、脳にも供給されますから、アルコールの持つ強い刺激が中枢神経を麻痺させ、思考能力に異変が現れる訳です。早々酔っ払いの出来上がりと言っていいでしょう。

さらに、多量のアルコールを摂取すると、本来は肝臓で排気されるはずの有毒物質「アセトアルデヒド」の処理が間に合わず、血液に溶け込んでしまいます。すると、毒入り血液の出来上がり!! その毒入り血液が全身に回ると、様々な場所で、様々な中毒症状を発症します。少量なら顔が赤くなる程度ですみますが、濃度が濃くなるにつれ、激しい頭痛や動悸、吐き気などを催し、最終的には嘔吐を引き起こすという訳です。

しかも、私たち日本人は、アセトアルデヒドを分解するアセトアルデヒド脱水素酵素の乏しい民族。なんと、この酵素は、遺伝によって先祖代々受け継がれているもので、全く持っていない人も少なくありません。これが、“日本人はお酒に弱い!”と言われる最大の理由です。

つまり、アルコール酔いはしても、中々アセトアルデヒド中毒にまで進行しない人はアセトアルデヒド脱水素酵素を沢山持っている人。逆に、すぐに気分が悪くなる人はアセトアルデヒド脱水素酵素の少ない人という事になります。そう、この酵素の所持量によって、お酒に強い人と弱い人は決まって来るのです。もし、酵素パワーの弱い人が、短時間に多量の飲酒をすれば、たちまち重篤な事態に陥るでしょう。それこそがキュウセウアルコール中毒です。

ならば、自分の体内のアセトアルデヒド脱水素酵素量を知るにはどうすればいいのかと言うと、飲めるところまで飲んで限界を知るほかありません。ただし、日本人の1割はアセトアルデヒド脱水素酵素を持たない人で、残る9割のうち5割までがアセトアルデヒド脱水素酵素の働きが極めて弱い人だと見られます。となると、いくら限界を知るためとは言え、いきなり短時間に多量のお酒を飲むのは自殺行為。当然、その限界を知らない人に短時間に多量のお酒を飲ませるのは殺人未遂行為です。

Posted by kenko-st